問題はどこにも存在しない

今回は、ヴェーダの問題解決策についてご紹介します。マハリシは、バガヴァッドギーターの注釈の中で、あらゆる問題への答えを次のように説いていました。

あらゆる問題への答えは、問題などどこにも存在しないということです。この真理を認識できれば、すべての問題が消え去ります。これが知識の力です。これは、ただちに悟りをもたらす英知の力です。──マハリシ

「問題などどこにも存在しない」という真理を認識できれば、すべての問題が消え去るということですが、そのような認識は知識の力によってもたらされます。そのような知識の一つが「ヴェーダの問題問題解決の原則」です。

この「ヴェーダの問題解決の原則」は、ヴェーダの文献の一つである、バガヴァッドギーターの知識に基づいています。バガヴァッドギーターでは、アルジュナという主人公が、自分の先生であるクリシュナから教えを受けますが、その教えが「ヴェーダの問題解決の最初の原則」です。

バガヴァッドギーターの中で、主人公のアルジュナが親族を相手に戦争を始めようとするとき、クリシュナがアルジュナに「プリターの息子よ」と呼びかけました。それによって、アルジュナの心の中に、母親や親族への優しい感情が目覚め、親族と戦うべきか、戦うべきではないのか、という問題に直面し、苦しみ始めます。そして次に、クリシュナの教えに導かれて、その問題を乗り越え、成長するのです。つまりアルジュナの問題は、クリシュナによって引き起こされ、クリシュナによって解決されます。クリシュナとは、ヴィシュヌ神の化身であり、全能なる自然の力の化身ですから、アルジュナの問題は、自然によって引き起こされ、自然によって解決されるということです。ではなぜ自然がそのようなことをするのかというと、その人を成長させるために行っているのです。

この原則では、アルジュナの問題は、クリシュナによって引き起こされ、クリシュナによって解決されるということでした。では、アルジュナの問題を解決するために、クリシュナがアルジュナに与えた最も重要な教えとは何でしょうか。それは「活動の領域から離れて、純粋意識に立ち返りなさい」というものです。それはつまり、問題から離れて、純粋意識にたち返りなさいということです。

問題とは、それを解決することができないという心の無能力さから生じるものです。例えば、私たちの能力が小さければ、あれもできない、これもできないと、たくさんの問題が見いだされますが、自分の能力が高まれば、それらは問題ではなくなります。

つまり、純粋意識に立ち返って、そこからより大きなエネルギーや創造性を引き出せば、問題を解決できるので、問題は消えてなくなるということです。このように、問題が起こったときに、その問題を解決しなければならない、という必要性に迫られて、私たちは自分の内側に眠っていた能力を引き出します。そのようにして、私たちは、成長していくのです。

ここで、もう一つ大切なポイントは、「問題は、自然によって引き起こされ、自然によって解決される」という点です。つまり、自然は、問題を与えるだけでなく、解決策も与えてくれている、ということです。そのことは聖書にも説かれています。

神は、あなたが耐えることのできない試練を与えることはない。そして、試練だけでなく、そこから抜け出す道も与えてくれている。──新約聖書(コリント人への手紙1,10.13)

神様は、問題や試練を与えるだけでなく、それを乗り越える方法も与えてくれているということです。

しかし、せっかく自然が、それを乗り越える方法を与えてくれているのに、問題で頭がいっぱいになって、周りがよく見えないと、そこにある解決策を見いだすことができません。

問題とは、その人の頭の中だけにあると、マハリシは説明しています。問題で頭がいっぱいになって、そこにある解決策が見えなくなっている状態、それが問題だということです。

ですから、何か問題が起こったときには、まず瞑想して、心の安らぎを取り戻し、心を問題からひき離すことです。それによって、冷静さを取り戻し、周りが見えるようになると、なにかしら問題解決の糸口を見つけ出すことができます。

そうした体験談を一つご紹介します。これは、数カ月間、瞑想ができていなかった方の体験談です。

色々な問題を抱えて「どうしたらよいかわからない」と限界を感じたときに、ふと「そうだ、瞑想してみよう」と思い、始めました。すると、すっと心が静まっていき、瞑想後には「ああそうか、こうすれば良かったんだ……」と問題への答えが自然に浮かんできました。というより、その答えは自分の心の深い所に元々あったのに表面的な出来事に惑わされて気付かなかったのです。これまで見えていなかったものが見えたという感じで、明確で迷いのない答えを得て、 何ヶ月も悩んでいたことが一気に解決されました。

問題で頭がいっぱいのときは、いくら考えても答えがみつからないものですが、瞑想して落ち着きを取り戻すことで、自然に答えが浮かんでくるようになります。

もう一つ、映画俳優のアーノルド・シュワルツネッガーの体験談をご紹介します。彼は、1975年に、映画俳優として大きなチャンスをつかんだ年に、膨大な量の仕事に重圧を感じ、押しつぶされそうになり、超越瞑想を始めました。そのときのことを、彼は、こう話しています。

超越瞑想を学んで2~3週間たった頃、落ち着きが増して、心が問題から切り離されるのを感じました。それによって、様々な問題を一緒くたにし、一つの大きな問題として感じることはなくなり、いま行うべき1つ1つの事柄に集中できるようになりました。──アーノルド・シュワルツネッガー(ビジネス・インサイダー、2015年2月4日)

一度に沢山のことがやってくると、一つの大きな問題ように感じられ、何から手をつけていいかわからなくなってしまうものです。 しかし、沢山の事柄もよく整理してみると、大事なことと、そうでないことに分けることができます。 瞑想して、心の余裕を取り戻すと、一度に沢山のことがやってきても、今行うべき重要なことを正しく選択できるようになり、一つ一つの事柄に集中できるようになります。

このように、大きな問題がやってきたときに大切なことは、瞑想して心を落ち着かせて、クリアーにすることです。それが問題を解決するための基盤となります。

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